2020年12月30日水曜日

V2Hで本当に電気料金下がるの?実際には上がったよ?という話題が出た件について

おはようございました。

年の瀬に以前の職でお世話になった方々の技術相談を行いまして、
その時に出た話題に
『V2Hで昼間電力を深夜電力に移動させても電気料金は下がらないどころか増えた』
という話が挙がったので簡単にその状況説明をしたいと思います。


V2Hは簡単に言ってしまえば水素燃料電池自動車電気自動車やハイブリッド自動車の電池から、家に電気を送れるようにしよう!という話です。
今回ご相談いただいた話題の考え方としては単純で、
夜間電力より昼間電力の方が高いなら、夜間電力を充電して昼間使えば電気代が安くなるよね?
って話なのです。

しかし、ここで大事なことが抜けています。

電気を移動して貯めるという行為については、何らかの変換作業をが伴うので、幾らかの損失・効率がかかわってくるという問題です。

例えばリチウム蓄電池であれば、丁寧に充放電したとしても、99.5%程度をクーロン効率(=電気を化学変化として変換する効率)とします。
コレは理想的!と思っても、周辺の充放電制御で95%の効率低下は避けられません。

ですので充放電だけで、0.95×0.95の90%程度まで低下します。実際には電流効率(=電流が流れた分の損失分)もあるので90%以下には下がるでしょう。これだけでも嫌な感じがしてきました。

そして次に考えなければならないのがV2Hの本体の効率と電気自動車内の充放電器の効率です。
私は装置自体を変えるほど裕福ではないので、少々高めに見た場合の値を採用してみます。

絶縁の変換器ならおおよそ90%、非絶縁側の充放電器は95%程度が最大値です。
V2H本体は絶縁構成で、自動車内の回路は絶縁されていますので、この数値を掛け算した値になります。
そして充電電池のセルを均等にするための効率も考えねばなりません。これで最高でも92%ぐらいまでしか上げることはできません。
ですので、充電されるときは次のような計算になります。

充電に必要な電力=充電したい電力÷0.95(V2H)÷0.9(電気自動車)÷0.92(均等充電)÷0.95(クーロン効率とコントローラ周辺)÷0.98(電流が充電に寄与する効率)

ですので、効率としては

充電に必要な電力=充電したい電力÷0.732

おおよそ1.35倍の電力が必要になります。
逆の放電も考えてみると

放電に必要な電力=放電したい電力÷0.95(V2H)÷0.9(電気自動車)÷0.92(均等放電)÷0.95(クーロン効率とコントローラ周辺)÷0.98(電流が充電に寄与する効率)

放電に必要な電力=放電したい電力÷0.732
おおよそ1.35倍の電力が必要になります。

したがって、充放電すると1.85倍の電力が必要になるわけです。
充放電すると電力量はざっくり2倍弱必要と考えていいでしょう。
つまり、夜間電力と昼間電力の料金差がだいたい2倍ぐらいないと、料金的側面での電力の移動に意味はないというわけです。

ですので基本的に夏場のピーク時間、中国電力では7月から9月の13時から16時の以外はこの機能を使わないのが妥当かもしれませんね。
勿論デマンド値(30分当たりのピーク電力)が電力料金に影響する場合は話が変わってきますので、そこは別途ご相談ください。

※私は超絶貧乏人なのでV2Hや電気自動車を買うことなんてできる訳もなく、実際の電力量や効率の測定を行っていませんから、多少の誤差が生まれます。このブログはあくまでも妄想なので許してください。

オーダー計算をしなければ意外と危険なことに気づかれた方も多いのではないでしょうか?
私みたいな実践野郎の電気回路屋さんはざっくりのオーダー計算で、夏場の電力料金問題と災害対策用品としてしか見ていないのですが、下がると思ってしまう方は結構多いはずです。

ちょっと踏みとどまって考える・オーダー計算をしてみる癖をつけましょう。
その設備は何のための投資か?を考えることも重要です。災害対策ならV2Hか蓄電池か発電機のどれか?はあるべき代物です。
その非常用設備を邪な方向で使うときは、必ず検証が必要です。

私は超絶貧乏人なので、発電機と変圧器2台で停電対策を行っています。

ちなみに、個々の数字だけで考えてみて頂いたら分かりますが、家用の蓄電池ではだいたい2倍→1.7倍程度まで差が改善されます。それでも電池の劣化という問題を考えたら昼間の電力の補填に使うか?というのは結構ぎりぎりの線だと思います。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

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