2020年4月26日日曜日

アナログディスカバリー用にループゲイン測定アダプタを作成する

おはようございました。
少し前の記事『DC2629A(LTC3310SEV評価基板)の代表特性を調べる』で、『本格的にMHz帯の対応を考えなあかんなぁ~』と妄言を垂れていたのを覚えていらっしゃるでしょうか?
私自身が仕事柄結構制御関連で遊んでいたこともあり、まともな挙動が分かるデータが無いと気持ち悪いという特異な変態気質でもありまして、今回は電源系のループゲインを測ることができるように画策しようとした次第です。

アナログディスカバリーはその構成上結構厄介でして、発振器がGNDに対して浮いていないという特性があり、単純にループゲインを測るためには発振器を直流的に浮かす必要が出てきます。
真面目に回路設計してる会社様はNF回路設計ブロックのFRAkeysightのE5061B-3L5と推奨される構成用品買えば都合つくのですが、一般サラリーマンが趣味でこういう馬鹿げた事をやっている我々にとっては、こんな高いものが容易に手に届く訳もありません

そんな訳で、毎度お馴染み雑多なものはamazonなんかよりも安い上に高性能秋月電子で転がっている品物で何とかしてみることにしました。

大前提として、信号トランスは100kHz以上で10MHzまでそこそこ測れればいいという前提で作っています。
ですので、私みたいにHP3562AやHP3563Aが無くもっと低い帯域が欲しいなら、前回使ってた複数回路用のロータリースイッチ辺りでオーディオ用のトランス別で付け、切り替えて複数回測定するという前提も必要になってくるでしょう。
そう考えると、MHzスイッチング時代で現場で楽々できるのはNF回路設計ブロックのFRAとネットワークアナライザの2台装備しかない訳なのですが、意外とこの手の装備をしていない会社様が多いことに驚かされます。

さて、今回作成に利用したのは秋月電子で販売されていた『T-68-2』というトロイダルコア。これに『バイファラ巻き』と言われる手法で高周波用トランスを構成してみます。
で、目標に近い周波数帯域と測定可能範囲が得られそうな適当な回数(今回は20回程度)巻いてケースに詰め込み、ICクリップを接続します。

こんな感じで作ってみました。
今更ながらですが、作ったトランスはしっかりと特性確認して、どの帯域で使えるか?を確認しましょうね。電卓だけだとちょっとズレますよ?
で、この前の評価基板の特性を高い帯域まで測ってみようと思った次第。

アナログディスカバリー上でも結構しっかりとデータを取ることができました。

そして 我が家のHP3563Aで取ったデータを付き合わせると完成。


ちょっと負荷条件(しっかり負荷かけた)が変わったので、160kHz超えたところまで伸びているのがよく分かります。これでHP3563Aではちょっと手の届きにくかった帯域まで評価ができそうです。

さて、次はPSRRをどうやって測定するか?だな…。
ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。



2020年4月23日木曜日

HP3563A,HP3562A用にインピーダンス測定アダプタを作成する

おはようございました。
今回も例にもれず本来の本業の話です。

色々と測定環境が充実し、なおかつ回路設計をこなしていると、素子の特性を測る・電圧を印加した状態で合成抵抗を計測するってのが欠かせなくなってきます。
比較的高い周波数帯は諦めて時間と手間をかけてネットワークアナライザで測るのも手ですが、そこまでじゃない比較的低周波領域の代物なんかは、簡単にサクッとそこそこの精度で測れる方が何かと都合が良かったりもします。

例えば、

  • スピーカーやモーターなどの駆動源+物理的共振モデル
  • 圧電素子、磁歪素子
  • 超音波発振子
  • そこそこ高精度な非破壊検査用途
  • 電解コンデンサの劣化具合を測る
  • スイッチング電源の出力端から見た、制御がかかっていない状態の合成インピーダンス

この手の用途で使用する物は100kHz以下の領域でも十分間に合う事が多いので、測定できる環境を構築しようと思った次第です。

5V切っているならアナログディスカバリー+専用アダプタでもいいでしょう。ですが、私の相手している代物は未だにレガシーデバイスな代物が多く、オフセットで±10Vを要求される場面がしばしばあります。

特にスイッチング電源を設計した際に小さなLでノイズを緩和し、電解コンデンサを含めた多数のCで再びフィルタリングする手法をよく目にしますが、予め電圧を印加した状態でのコンデンサの周波数特性を加味したうえで、合成抵抗の周波数特性評価が必須要件になってくるのです。
下手に部品選定するとLC共振でターゲットインピーダンスを満足できなくなります。

そう、今までリニアレギュレータで処理していた回路をスイッチング回路で構成し直したい…今回の発端は偶々そういう仕事が舞い込んできたのですよ…。
今どきのスイッチング電源はうまく構成すればリニアレギュレータ並みの低ノイズに持ってゆけます。私の得意分野の仕事ですしね。
で、仕事なら仕方ないよねぇ~ってな訳で、今迄散々欲しくても作らなかったのに重い腰を上げだしたって訳です。
そんな訳で、気が向いたら仕事ください、そしたら趣味で作ろうとしていたものを作るように動きだしますので…って、なんか仕事の目的が変わってきている気がする…。

さて、この手の物を用意する過程で重要なのが『基準抵抗』です。
抵抗の精度もさることながら、周波数特性が1桁上でもそこそこ使える代物が必要になります。
抵抗はその素性や組成、リードの材質などからいくらかの周波数特性を持ちます。
また、抵抗の数値によっても混ぜ物や内部の回路網がが変わることからも高い周波数領域ではコイル側が強くなったり、コンデンサ側が強くなったりするのです。

そんなことも知ってたものですから、いくつか試しにリードの抵抗をいくつか複数種類購入したのですが、結局はある程度の高周波数での使用が前提の面実装の抵抗には勝てないのでした。


ココには記載していませんが、今回使用した別途購入した面実装の抵抗は1Ω、10Ω、100Ωともに10MHzまでほぼ平坦な特性でした。
まぁ、専用の奴を買えばいいのですが、1個が数万円するし、高々100kHzだし、傾向が見れたら御の字な測定機器なので、安く手軽にを推進しました。
これが10MHzまで…とか言い出したならば本気でやるしかないですが、今回はそんな案件ではないですし、それなら最初からネットワークアナライザを買いに走るってのが筋だとも思います。

という訳で、使用したのは
amazonで転がっている安物のケルビンクリップ
秋月電子で購入したロータリースイッチ(4回路3接点)、基準抵抗(面実装の高容量品)、BNCコネクタ、金属ケース
こんなところで作成できます。
今回は貧乏人らしく¥5000で収まる範囲で仕上げてみました。

注意点として、精度をしっかり確保するために基準抵抗からは4つ線を出して、ロータリースイッチに個別回路で接続する必要があります。
また気休め程度ですが、ロータリースイッチは一度分解して洗浄と専用のグリス塗布をした方が良いでしょう。

内部はこんな感じ…高周波が通るには汚いって?100kHz程度だから問題なし(オイ)

で、完成がこちら、ただの箱にスイッチだと何か分からなくなるので、分かりやすくテプラで表示しておきました。

試しに既知の抵抗や素子を測ってみます。無事動作が確認できました。

代表例の写真で100kHzまではそこそこフラットな特性の68Ωの測定中の写真です。問題なく測れることが確認できました。

分かりやすい所で電解コンデンサの特性を見てみましょう。

25Vの100μFで低インピーダンス品の物ですが、それでも16kHzそこそこまでしか容量性の性能を保持することができず、インピーダンスもピーク値で0.08Ωそこそこにしか下げられないという結果に至っています。
5Vや3.3Vというレトロな回路構成であっても、ちょっとでも電力が大きくなると5%の電源変動に抑え込むっていうのは相当厳しい事が分かると思います。
つまりは基板設計において、基板で仕上がっている電源部分に関してはしっかり検証せねばならない、さもなくば原因不明の動作不良にいつも悩まされるって事がよく分かると思います。

HP3563AやHP3562Aという汎用的な専用機っていいですよね。上手くやれば簡単に直読できるようになっています。

これで一先ずは電源回路の設計容易化から圧電素子周りや超音波物の話、スピーカーの選定もできるようになった訳です。ん~万能感!

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。