おはようございました。
最近EMCがらみの求人が多く、それがもろ車系で愛知か横浜限定という何ともな内容に、鳥取ではダメですか?
なんも無いので自然のオープンサイトですよ?
と哀しくなる今日この頃です。
さて、EMCの話が出てきたところでふと思い出した事があります。
題目にもあるアプリ側のソフト屋さんが一気に組み込みもこなせる原因にもなった『ラズベリーパイ』の話です。
そのマーケティングの上手さや、当時安価に性能が得られるCPUをうまく活用したことなどで一気に
『組み込みLinuxを手軽にやるならコレ!』
と定番化したRaspberry Piですが、いくつかソフト担当側が気づかない大きな落とし穴があることをご存じでしょうか?
ソフト系の人だけでなく、電子回路系の人であっても周辺技術を知ろうとしない人は
『ラズベリーパイがあるのに何でハード作るの?馬鹿じゃないの?』
という話をよくしておられます。
そのラズベリーパイが抱えている問題のなかで致命的なものの一つに放射ノイズ問題(+ノイズ感受性の高さによる誤動作問題)ってのがあります。
ちなみに放射しやすいってことは受けやすいことと同義語でもあります。
世間様は無関心の電磁波障害、EMC、無線関係の話ですが、昨今のなんでも無線化の世の中では非常に重要な問題になってきます。
この問題について、製品化するにあたってEMCやVCCIって言葉を最低限知ってるのか?がとても重要になります。
皆さんご存じの“自主規制という名のガチ規制”です。民生品であれば電安法を通せなくなります。
輸出なんて論外、あっちは自主じゃなくてガチの法規制ですからね?
ラズベリーパイがプラスチックのケースに実装されている場合や、特段放射ノイズに対する対策を施していない場合において、一般的な構成要素を採用すると、ほぼ間違いなくVCCIの規制値は(Class Aであっても)通ることがギリギリ困難です。
一般状態(家や公共)での使用条件は普通はClass Bで通しますから、まずClass Aが通るレベルにまで抑えたうえで、そこからさらに-10dB落とさねばなりません。
ノイズ担当者としては結構きつい要求であります。
『え?標準についてるCE認証は?』
と突っ込みが入ると思われますが、ソフトやハード構成変えたらノイズへの影響が変わるというのが技術的な知見からすれば当たり前のことなのです。
CPU負荷の殆ど無いソフトならノイズがないのは当たり前だったりします。
そう、ソフトやハードの構成を変えた後では再度VCCIなりCISPRなりの規格を参照し、プリコンプライアンステスト→コンプライアンステストをしなければ、販売していたら後々痛い目にあいます。
ソフトを変えたらコンプライアンステストを実施する(大人の事情でしてない場合でもこっそりプリコンプライアンステストぐらいはする)というのが電子機器関連の業界では当然に行うべき作業の一つなのです。
それを知らずしてハード設計(むしろこっちが主力)のできるソフト屋や機器メーカーたちにひたすらマウントとってくるよくわかっていない連中(主に純粋なアプリ系だけしかやったことのないソフト屋か、技術を知ろうとしない経営者)の多いこと…(涙
おまけに、こういうマウント取ってくる輩はUSBフラッシュメモリやマイクロSDカードの耐久性問題とかも完全無視で、こっちの言うことなんて全く耳を貸そうともしませんもんね…。
こっちはガチで産機用ハード設計しながらOS移植までついでにやってんだ!あんたはOSの上の話しか殆どできないないだろうが!話ぐらい聞いてくれてもいいだろう!!と思うこともしばしば…
…おっと…話が逸れました。ノイズの問題に戻します…
ラズベリーパイのEMC問題についてはどなたかが試しにやってみたものをこっそりサンプルで公開してくださっていますが、300MHz付近のノイズは某業界のリモコン周りで使用している周波数帯ですし、304MHz付近にもRFIDが居たりします。
普通に地デジの周波数帯や公共の無線、緊急無線帯に至るまでいい感じに出てますし、より高い方なんか酷いですよね…生(プラスチックケース含む)の状態では決して外に出せないことが如実にわかります。
顧客にうっかり通信障害(ビットレートエラーが多い、重くなった)が起きるな…なんでだろ?なんて思われてます。
運悪く?私のようにそれなりに知見があって、プリコンプライアンスできそうな一式持ちながら
クソ設計だ!m9(^Д^)プギャー
するのが趣味の人間だったりすれば、公開処刑がもれなく実行されます。
まぁ、それなら精々ネタにされるだけですから可愛いもので、うっかり始末の悪いほうのハム野郎に当たった日なんか確実に追い詰められます。そういう周波数帯が出ているんですよ?
さて、ここからわかることはラズベリーパイは産業用途としては使えないこともあるということです。
ですから、選択肢が1個しかないという状況は非常に危険。
だからあえて言わせてもらおう、手段の数は1じゃなくて2にすれば問題ない!と…。
そんなわけで、手持ちの選択肢(カード)は常に複数用意しておきましょう。
どのような業界においても、たとえそれが販売であったとしても、1つしかないという状態での1という数字は忌み嫌うべき数字です。
企業・販売元・開発元として組み込みLinuxのプラットフォーム
(というよりはネットワークに接続しやすい何らかの組み込み機器)
が必要であり、そのプラットフォームを用いて開発するのであれば、
ラズベリーパイだけでなく、別の手段も用意することが望ましいですよ?
ハード寄りな所を解消してくれるエンジニアが居れば、世間様で売られている組み込みボードに大差はありません。
私はハードで処理できるところはできるだけハードで処理してソフト作る側に楽してもらいたい(というか、こうすると無用な争いが起きない)ので、とりあえずXilinxのZYNQあたりで妥協させてもらいます。
そう、ZYNQにLINUX乗せたがるのは『ラズパイだと(販売できなくて)やばいから』という側面もあることをお忘れなく…。
もちろんラズベリーパイ自体が産機としてのハード的な耐久性や信頼性という面でもいろいろ問題のある商品でありますが…。