2022年11月30日水曜日

ノイズ・電源インピーダンスを測るためのDCブロック・ハイパスフィルタの特性測定

こっち(広島)に来て測定器のノイズがなんか酷いのだが、ひょっとしてAC電源(=コンセント)が屑なんじゃねぇの?

おはようございました。

見習い変ジニア@電源に疑問を持ち始めた 漢です。


測定器のノイズについて、自宅(米子)では何の問題もなかったのですが、広島に左遷されてからというもの、ずっとなんだかよく分らない周期的なノイズ(30kHzぐらい?)にかなり悩まされております。

特にレトロな装置を愛する(というよりは中古装置しか買えないことが多い)我が家のお財布事情と、測定器類を絶対に買わせない!という何らかの確固たる意志を持った職場の圧力にあっては、中古機器を整備してそれなりの測定品質とよろしくない不確かさの前提で色々作り込むしかない訳です。

おまけに会社自体に測定器を持ち込むには重量がものすごく、とんでもなく面倒くさいので、実質自宅に引きこもりながら色々測定するという有様。

時々タイムカード押しに会社に来るとかふざけた出勤状態なこともある訳です。

そんな、測定器を愛してやまない?生活にあっては、私の愛器が米子から広島に移った際に何やら調子が悪い症状が続いており、測定器に触るとなんかビリビリする…ということも屡々…。


古い測定器は

トランスで変圧→電解コンデンサで平滑→リニアレギュレータで商用周波数帯のPSRR確保で綺麗で理想的電源ですね?ニッコリ!

という単純な方式であります。

なので、AC電源自体が高周波まみれのクソ汚い電源である可能性についてはあまり考慮されていません

リニアレギュレータのPSRR特性を測ってみればわかりますが、少しでも周波数が高い領域は完全に門外漢なのです。かといって、発熱万歳なリニアレギュレータ業界において、高速なリニアレギュレータの開発は絶望的です。

とりあえずレトロな装置類には高周波系のノイズを消せるようにパスコン打ち増し・良い電解コンデンサに打ち換えで何とか耐えていますが、狭い装置に於いては逃げようもありません。


こりゃあ何とかせんといかんなぁ~と思い、カードの締め日のおかげで良さげな代物をボーナス一括払いができたことから、ついつい測定の下準備から始めようと思った次第。


電源品質の可視化について、単純なやり方としては、50Hz、60Hzといった商用周波数帯をフィルタリングして、他の周波数帯の成分を解析するとか、素直に電源品質アナライザ使うとかを思いつきます。

今回の対象は単純に電力系統にぶら下がる受動部品側の問題ではなさそうです。そのため、インバータから放射される基本周波数が比較的高めのノイズに絞ることにしました。


また、今回のボーナスでは、会社で使う開発用PCを自腹で買うことになったので、電源品質アナライザは残りのポケットマネーではとても手が届きません

諦めて、良さげなハイパスフィルタで検討してみることにします。


え?何で会社用のPC買うのかって?

会社では組み込みソフトも扱うんですが、会社の事務用PCにはそのソフト入れてはならないって決まりがあります。

それでも出張が無い間はこっそり入れて何とかやってたんですが、出先でビルドしなおせ!とか訳の分からんことを言い始める上司のせいで、自腹で買う羽目になったのです。

勿論1年半前からソフトウェア開発用のPCが絶対いるから買って!って言い続けているのです。

しかし、その上司は自分に都合の悪いことは全て忘れるわ、自分の保身のために

『予算使いたくないから…』

個人の測定器を徴用する絵に描いたような素晴らしいクソ上司共だったりします。

1年半言い続けたうえに何もせず(寧ろ言う度にキレてくる)、この前ついに会社のセキュリティー担当に見つかって怒鳴られて

『(セキュリティー部門に対して改善策として)買う!』

と話がまとまったものの、

『買う!(但し、すぐに買うとは言っていない。永遠に先延ばししても問題ない)』

だったようで、結果的にどうしようもなくなったので、私は個人でしぶしぶ買うという選択肢を迫られたわけです。

また、別件で会社で4Kの動画編集をさせられそうになったこともあるのですが、会社の事務PCではスペック的にきつかったようで、H.264のエンコード時にメモリ不足で落ちるという症状に見舞われて、『PCが残念スペック過ぎてできません!』と言ったら『家でやって持ってこい!』としつこいぐらいに圧迫を受けました…。

『分かるかなぁ~?これがコンプライアンスとか騒いでいる企業において、取締役が堂々とコンプライアンス違反を強要する日本のごく一般企業の実態なんだぜぇ~』


…まぁ、そんな訳で、移動開発用PCとして15万ぐらい飛びました(泣


ということで、残り少ないポケットマネーでできることと言えば精々フィルタを買うことぐらいな訳です…。

(くそぅ、移動開発用PCが無けりゃあ電源品質アナライザに手を出せたものを…いや、それも会社で買えよ!って突っ込みが入りそうですが…)

元々家で開発PCとして2年前に買ったPCを使い回してたので、“移動”の必要性さえなければそれで済んでいたのですが…


そんな訳で、前置きが長くなりましたが私が目先でできることはフィルタの特性測って、問題ないレベルの差動プローブで測って、

『AC電源(=コンセント)がクソだったね、残念!』

と、転職覚悟で米子に戻るか次のボーナスでノイズカットトランスを買うか、どちらかの理由の証明することぐらいしかない訳です。



さて、今手持ちの課題としている電源品質のクソ加減を知る手立てのほかに、SMAのDCカットの低周波域の測りたいという内情があります。

これの理由としては、シャントスルー法による電源インピーダンス測定のための下準備です。

『電源インピーダンスを測定する際に、電子負荷で低域を測定したのち、高域をシャントスルー法にて測定するのだが、どの辺でデータを合わせるか?』という指標が必要になります。

そのため、電源印加時にネットワークアナライザが壊れないように、DCカットフィルタの使用が必要となりますが、そいつがどんな素性か?を知らない状態で使うのは大変危険です。

とは言え私は貧乏変ジニア…nanoVNAやLiteVNAみたいなお手頃装置をこよなく愛している高級機など触ったこともない貧乏変ジニアなのです。

高域で信頼できるような測定器はないので、低域の素性だけでも測っておこうと思った次第。


さて、今回は入手性の高い物でテストすることにしました。

DigiKeyにて販売していたCRYSTEK CBLK-300-3

AMAZONに転がっていたレーザーマーキング済みのDCカット


そして今回追加で投資購入した

THORLABS で販売している 5kHzのハイパスフィルタ EF115


です。

5kHzを選んだ理由ですが、

  • 5kHzなら最近のインバータならばだいたい基本周波数を超えているので、そこそこ測れそう
  • 代表特性のサイドローブの特性が一番奇麗だった

…えぇ、理由なんてそんなもんです。


さてお待ちかね、フィルタの特性です。

入出力はだいたい50Ωで終端してあります。また、EF115の測定に当たっては、低域の減衰傾向を正しく測定するために、kHz以下の低域の減衰はHP3563Aにて測定を行いました。

流石は専用機!ダイナミックレンジがデカくてものすごい優秀ですよね!!

持っててよかった専用機!予備機(HP3562A)があるので壊れても安心です。

そんな訳で、MHz帯も綺麗に広いダイナミックレンジで測れる装置が欲しい今日この頃であります。

CRYSTEK CBLK-300-3の低域の暴れている件は、面倒くさい(私は使わない前提)という理由でHP3563Aでは測っていないため、S/Nが悪くてギザギザになっていますが、凡その傾向は取れているのでOKとしました。(こいつの使用目的は商用周波数のカット目的ではないですし…)

御覧の通り、本来高速な電子負荷でそこそこ確実な測定環境が準備できる場合は CRYSTEK CBLK-300-3 一択だと思います。

出どころの分からない中国製の物はかなりコンデンサが大きいので、DCバイアスやACの波形が結構動くときに歪むんじゃねぇか?(どうせ安物のコンデンサでしょ?)と少々心配になります。ただ、私みたいな貧弱な測定環境の数kHz以降は全てシャントスルー法に任せる前提なら非常に有用です。


電源ノイズのの調査については、当初の目論見通り THORLABS の EF115 を使えば、インバーター関連のノイズだけをうまく抽出できそうな感じです。

2kHzを少し超えても-57dBは稼げています。スペック通り5kHzから上は-3dB以内で軽く揺れる程度ですし、20~30MHzまでは取れるということなので、凡その傾向を取る手段としては許容範囲でしょう。

肝心の商用周波数の減衰はおおよそ90dB弱ですので、141Vのピーク電圧が5mVまで減衰できることを示唆しています。

その後もそこそこ減衰できていますから、インバータ依存の高周波を絞って撮れそうです。自宅(米子)に転がっているインバータで試して行けそうなら、広島の宿舎や外でも試験してみたい…と思います。


ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。