2022年3月1日火曜日

EBAZ4205でガッツリ遊ぶ前に電源事情を調べてみることにした

さて、ずいぶん昔?に流行したEBAZ4205の基板の話の続きです。

今回は2.0㎜ピッチコネクタ→2.54mmピッチコネクタの変換ケーブルをサクッと作り、ちょっとした下調べを行ったので記そうと思います。


2.54mmピッチへの変換ケーブルですが、うっかり誤挿入を防ぐために、キーがついているMILコネクタにしようと思いました。

世間様は今だコネクタ周りの樹脂は流通が悪く、どのメーカーも代替品切れ状態が続いております。

オムロンは比較的在庫があるのですが、圧着の端子部が入手困難です。

圧接なら入手可能です。

圧接が嫌(工具がない)なら、ちょっと高いですが日本航空電子の物がまだ手に入ります。

数年前に余計目に買ってなかったことを後悔しながらも、とりあえず今回は13本用意しました。

2.0mmピッチの奴はアリババに転がっているものを使いました。


さて、ここからが本題。

EBAZ4205の電源は残念電源(クソ電源)という話をチラッと風の噂で聞いたことがありまして、基板壊して(壊す可能性を含めて)測るのは嫌なので、とりあえずサクッと出せる範囲でどこら辺が残念なのか?を分かるようにしてあげようと思った次第です。


壊す可能性のある測定というのは、低周波域(概ね1MHz程度まで)の挙動測定です。

ぎりぎりの負荷かけてガンガン動かしてインピーダンスを測ったり、ノイズを重畳してPSRR計測などをすると、どうしてもIC周りのスペックオーバーギリギリの入力をしてしまいます。

FPGAは定格外の領域なので危険です。

電源ICが既知のメーカーの既知のICならいいですが、フットプリントだけTIの製品に似た出どころの怪しそうなICなので、非破壊検査待ったなしでございます。


本来ならもう少し踏み込んで、何枚か壊しながらの測定をしたり、

シャントスルー法で基板のインピーダンス見て、

m9(^Д^)プギャー

してやるべきなのですが、私の懐事情はそれを許してくれませんし、大型特殊のおっさん相手には誰も投げ銭などしてくれません

今回はそこまでの話をする前段階のの中間報告ということで、諦めて頂ければと思います。


また、シャントスルー法でインピーダンスを測るにしても、実際には、DCブロック突っ込んで、ネットワークアナライザ(もしくはTG付スペアナ)を壊さないように、減衰器の減衰量は適切なものを選んで、そのうえで校正かけて、一番S/N比がよく取れそうな減衰器で微調整しながら伝搬の状況を確認する。

勿論条件変われば校正かけなおしなので下手すりゃあ数日潰れる大仕事…


という一連の手順が最低限度必要でして、スペアナへの入力限界を超えないための下調査

を行うためのノイズ調査という括りでもよいかもしれません。

世間ではいまだに電源インピーダンスの測定ですらマイナーな話のなのですが、何時になったらこれらの測定がものすごい重要だということが浸透するのやら…


さて、手始めに起動の電流はどんな感じか?という観点で見ます。

出荷時状態そのままのもので、一切手を入れていません。

運よく電力計をお借りできたので、そいつの波形を貼ろうと思います。

EBAZ4205がこれ





5V0.5Aぐらいでも十分動きそうですが、余力見て最低でも1Aぐらいのものを用意しましょう。


ちなみにQMTECHのボード(XC7Z010)だとこんな感じです。



CPUに負荷がかかっていませんし、FPGAのロジックもほとんど利用されていないので、消費電力はかなり低めの値です。



次に上記のような初期出荷状態の負荷条件で、ノイズの状況を確認しようと思います。

とりあえず家のDL1740ではもうノイズフロアの領域に入ってしまって、全くと言っていいほどまともに計測できません

ですので、急遽準備したマシな物(キーサイトのMSO3000)で測定します。

本当はFETプローブや差動プローブを用意すべきなのですが、『そこそこ見れたし、準備が面倒くさかった』という事で、勘弁してください。


EBZA4205のノイズに危ない兆候がありました。





Ch1:3.3V

Ch2:1.5V(DDR-SDRAM)

Ch3:1.8V(VCC AUX)

Ch4:1.0V(VCC INT) シルク上は1V9というロットも存在するので要注意。

色々なトリガー状態で観察してみたのですが、1.8V系統が主要因であることは間違いないようです。

Ch3が800μ秒程度毎に大きく振動しているのがわかります。

150mV近いです、明らかに問題のある挙動ですよね。

それ以外はいたって平穏な様子。

また、この振動を拡大すると…


こんな感じで120~150MHzで振動が起きていることがわかります。

PCBパターンやレイアウトの設計上の問題でしょうか?

共振しやすい周波数があるようです。中華製のこの手のボードはビア打ちが結構甘くて、しょうもないところでインピーダンスがガッツリ狂ってモードが立っていたり、とりあえずは繋げてみたら運良く動いた!的な回路のまま出してくる輩も結構まだいます。

一回シャントスルーでガッツリ測った方が良いかもしれません。

その他の電源は、この1.8Vの振動に揺られて若干の被害を受けている模様。

ただ、動作の支障となるまでには至っていないようです。

こういうところにPSRRを測る理由があるんですが、いまだに一般的ではないんだよなぁ~残念。


念のため、ZYNQ特有の問題ではないことをしっかり確認したいので、QMTECHのボード(XC7Z010)でも1.8V(VCC AUX)の挙動を確認しておきます。



こちらは問題なし…と言いたいですが、スペック的に危険領域です。

パスコンの容量と数がデータシート上はNGです。

ですので、パスコンを極限まで削って強引に動かしている…

という認識でいたほうが良いかもしれません。

パスコンを増やしてノイズの幅を減らしたいですが、それをすると否が応でもループゲインが下がります。

下がるとインピーダンスを補うためのコンデンサが必要になります。

そうやってガッツリ沼に嵌るので、結局は電源ICを良い物(でかい電流流せて高い周波数領域をカバーする品)にせざるを得なくなるのです。

ちょっとコンデンサを増やす分には電気的には問題ありませんが、今回のQMTECHのボード(XC7Z010)では基板自体の空き空間がありません。

内層数を増やして信号を中に持っていくか?基板サイズを上げてゆとりを持たすか?お高い高級なコンデンサで一発逆転を図るか?IC変えて高周波数&広帯域化しまうか?の程度の選択肢になります。

というわけで、基本機能検証用のお試しボードだからと割り切った設計になっています。


とまぁこんな感じなので、玩具・評価用として遊ぶには程よい品物ですが、ガッツリ本気の用途には格安ボードは基本使ってはいけないことを十分認識しておきましょう。


ここからは超個人的見解ですが、EBAZ4205の落としどころの経緯は、TIのTPS563201の劣化版互換電源ICを使ったら制御帯域が低すぎてリップルノイズも大きく、電源スペック守れんのでパスコンバンバン置く羽目になった。

だが、パスコン置いたら高い周波数領域カバーできるようなパターン・レイアウトが困難になった。

おまけに一発目の負荷急変の電源供給の容量がカバーできても、数発連続で来るような急な負荷動作の時はやっぱり高い周波数で振動してしまう。

…どうせ大した制御(主制御)ではないし数年で終わる代物、見なかったことにしよう…

と、そのまま出荷…こんなドラマを感じてしまいました。


ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。


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