おはようございました。
所謂生存報告であります。
暇つぶしに電気通信技術者を受けていたら、案の定『法規』だけなかなか通らないという私生活を体現したかのような実態に既視感を覚えつつも、仕方ないから『法規』だけは多少試験勉強をしてやってもよい…なんて言う謎の上から目線で無事通りました。
暇つぶしに受けていることで法規がなかなか受からないという事で、伝送交換と線路の2種類は普通に科目合格しておりました。
そしてこの前の試験で無事法規科目が通り、資格者証も申請しましたので、これで一応 電気通信主任技術者 としても面目は立ちました。
後は電験1種と技術士の情報工学部門・上下水道部門ぐらいが自分に関わりそうなところなので、それが通ったらどれを暇つぶしに受けようかねぇ~?と路頭に迷うことになりそうです。
さて、そんな資格ってのは常時通るレベルにないと本当は意味ないよ?という前提を体現しようとしている私生活の話はさておき、本日は自動計測の追加の話。
数年前に『事実上5V電源供給としてはUSB-Aが定着した』という話をしましたが、それから暫く経ったおかげか、世間様には当時話題沸騰していたUSB-Cを用いたPD(Power Delivery)規格が普及価格帯に一気に落ち着き始め、標準的な小規模直流電源の規格として名実ともに標準化されつつあります。
おまけに昨今は10年前ではなかなか量産用に使えなかったGaNがだいぶ普及してきており、標準のACアダプタより軽い上に汎用性が異様に高いため、この標準化に拍車をかけています。
私もこの例に漏れず会社で真面目に働くために買わされたノートPCに搭載されているUSB-Cポートに65WのUSB-PDを突っ込めば、ACアダプタ接続なく充電とPCの利用が可能になるという、なんとも素晴らしい状況にあります。
この組み合わせは、10年前の当時某S〇NYの中の電源設計者であった私としては垂涎モノの大好物でして、当時のSi-FETの限界付近の速度でガンガンスイッチングして小型化を進めていた私は、この手のものに移行したくて仕方ありませんでした。
しかしながら当時は今の常識から見れば“頭のオカシイ輩”の力が強く、EMCの規格(当時は150kHz~が評価対象)の都合もあって50kHz未満のスイッチングが絶対正義とされていました。
当時私は某S〇NYの中の方々にスイッチング周波数上げたって電力密度上がらない!損失増えるだけだ!意味のない事するな!と、散々叩かれていましたねぇ~…(遠い目
その当時私はXDR-DRAMという特許運用で残念規格化した高速伝送路にも関わっていたことや、GHz帯入んなきゃだいたい電卓+誤差見込みで何とかなる!というシミュレータが高くて(今も)買わせてもらえない世代だったこともあり、なんでこんなしょうもないレベルのスイッチングやノイズで苦労してんの?何で常識が通用せんの?というちょっと不思議な世界でした。
事実、このS〇NYの子会社に入社する10年近く前に200Vで200kHzスイッチングの世界で遊んでいた訳ですから…。尤も、当時は超高速な制御系のサーボドライバなので、電流応答帯域を20kHz以上稼ぐために遅れ要素は極力減らさねばならないという命題があったので、限界まで強引に引っ張り上げていたのでありますが…。
今になってはS〇NYの子会社の建屋が売却で無くなったので、私と古参のどっちが正解であったか?は(当時の視点からであっても)火を見るより明らかなのですが、当時は200kHz以上にスイッチングを早くしても、インダクタ側の磁性体材料が入手の容易な一般品ではついてこれないので、使う意味は少なかったと記憶しています。
当時も、磁性体材料が許すなら、実験レベルでもいいのでもうちょっと上の帯域までやりたかったなぁ~と思っていた訳です。あと少しで電解コンデンサレスが見えていたんですけどねぇ~…(あと、当時の職は今と違って、多少は色々部材が買えたりもしたので…)
まぁ、今なら家に測定器が全部揃っているんで、スポンサー次第なんだけどな!
という言い訳をしつつ、壊すためにデバイス買う・評価基板を作るのは私の給与だけでは金銭的に無理なので、諦めます。
ここは仕事として(予算が)入ったら、考えましょう。
さて、そんなに熱望していたGaN採用のスイッチング電源が、昨今では比較的安価に買えまして、今回は会社が買わせてくれなかったので自分で買った開発用のノートPC向けに『RAVPower PD PIONEER』と、USB-PDの模擬信号を出す基板を取り付け、宜しく評価してやろうと思った次第です。
対して比較の標準とするのは日本では最もメジャーであろうApple純正のACアダプタ2種類。『A1385』(古いiPhoneについてる5V1Aの奴)と『A2305』(ちょっと前のiPhoneについていたUSB-PDで9Vまで対応の20Wの奴)です。
実際のところ、GaNの恩恵がどこまで得られているのか?ノイズ的側面はどうよ?
高効率化は小型化したACアダプタの熱設計にはとても重要な役割を果たします。
そこんところの実力を見たことがない私は、ちょっといいとこ見てみたい!と思った訳です。
因みにUSB-A側とUSB-C側2つポートがあるので、電子負荷を2つつなげて相関を取りながら測るのが最も正解に近いですが、私はだいたいの傾向がつかめればOKという適当が一番の人間なので、今回はType C側だけで評価をします。
さすがにこの程度の趣味で2次元の効率マップ書くほど暇でもないので…。
さて、私としては使われているICやデバイスを見たら、それなりに何が起きているのかが分かるので、それだけでそこそこお腹一杯なのですが、世間様に対しての説明には確固たる事実を確認したのちに『推測ではない現実』を元に話をする必要があります。
経営判断や重要な施策を行う際には、感情(による推測)ではなく事実に基づく話が必要かつ重要な要素になります。
かなり慎重に検討をしたとしても推測には自ずと感情が入るので、事実を元に語らねばなりません。
ですので、私が率先して世間ではあまり語られていない代表例を事実として晒し切ってしまい、これを根拠にあれこれ妄想の方向性をして頂く確固たる基盤にしてゆきたいと思うわけです。妄想が捗れば飯が旨くてたまりませんからね。
さて、先ずはApple純正品
A1385のUSB-A 5Vの低ノイズ性能は大量生産品の中ではピカ一の製品でして、固体高分子コンデンサを惜しみなくガンガン使った結果でもあります。
しかしながら残念かな…ただのフライバック電源だと思われるその回路構成の結果、効率はそこまで高くはありません。
頑張って72~3%というところ。効率も500mA付近が最大ですし、それを目指して作ったものと割り切れる製品となっています。
A2305はかなり妥協に振った製品で、スパイク状のノイズ(よく見ればスイッチングの際に現れる特徴的な振動)がしっかりお漏らしされています。
PDの実装につていは9V⇔5Vの変更はアナログっぽい動作でして、素直に制御定数弄って電圧変更をしている関係上、アナログで下手な共振や振動を抑えるのは困難と踏んだんでしょう。
熱の設計を優先したのでしょうか?素直に細かいところの効率を上げて88%そこそこまで引っ張ることを優先して、ノイズは二の次のような印象を受けます。
まぁ、安価を求めた量産ならこんなもんだよね…という内容。
5V定格負荷のノイズがこれ…
拡大すると…
9V定格負荷のノイズがこれ…
では本題のRAVPower PD PIONEER
『RAVPower PD PIONEER』には USB-Aと-Cの2系統あり、相互の負荷関係での挙動が気になるところではありますが、そこの所は2次側のダウンコンバータのお仕事の話だけなので、敢えて相関関係は測定せずに攻めることにします。
(複数台電子負荷持ってんだからヤレ!という強いお声=投げ銭?を頂いたら考えたいと思います。)
そのうち、PSRRヨロシク、他系統の電源負荷の変動による自系統の電源変動要素を測るっていうのが標準的な評価の一つになるとは思うのですが、個人でやるには電気代が結構怖い事になる結構時間のかかる内容なので、私はしばらく家では測定したくありません。
動作中のSパラメータだけじゃ本番の動作を再現する目標にはちょっと心許ないし、結局FRAかステップアナライザ+高速電子負荷とDCカットを実装したネットワークアナライザの多段の測定みたいな豪勢な構成が必要になると思います。
1系統では10分そこそこの測定でも、複数台の相関となれば測定点数の累乗で効いてきます。
真面目にやれば2台ですら自動測定でも1日仕事になりそうな予感…。
明らかにデジタル制御をぶっこんで、しかもコネクタや配線のロスもある程度加味をした電圧制御をぶっ込んできています。
ですのでロードレギュレーションなんてほぼ0Vですし、20Vなんてガチの負性抵抗特性です。
最初、何が起こった?と測定器が壊れたかも???なんて慌てました。
コンバータ自体はしっかり効率が90%超えを狙えるしっかりしたものですが、20V目標に落とす構成としながら出力をスイッチングで制限して出すことで、様々な電圧に対応する構成のようです。
そのため、20V以外では周期的な振動とノイズが見られます。
それでも安物のコンバータよりはかなり優秀です。
熱問題は効率を上げることによって抑えて筐体も小さくして、マーケティングとしてはGaNで90%以上の効率という謳い文句で最新鋭!アピールで宣伝効果を出す。
小型・高効率だからノートPCのACアダプタ置換え用途まで取り込んで、市場に数を出して事実上の市場における大量量産テストも行う…。
高周波駆動だから電磁界放射はある程度厄介だとしてもコンデンサやコイルを小型化しやすくリップルノイズはそこそこ対処しやすい。
一歩先の市場を見据えてある程度攻めに出た戦略とも言えます。
この手の電源系の投資方針やマーケティング、設計能力については日本は完全に中共に対して後れを取った(というか、今まともに設計・マネジメントできる人いるの?)状態。
現場の人間の一部は、まともなデバイス使って遊べないのが嫌で中共に転籍したかもしれんなぁ~なんて思ってしまいます。
そういえば私も10年ちょっと前にS〇NY系列の会社の中では小さいマイコン入れてシーケンス処理やデジタル制御擬きをしようしたことがあります。
私に丸投げされているプロジェクトだし、ちょっとぐらいまともな事しても許されるだろうなんて思って、
『色々な機能を乗せたいし、トランジスタやアナログで色々組むの面倒くさいので、マイコン使います!』
なんて会議の場で発言したら当時の下品な空気を作ってマウントとってきていた方々が急にガチギレしだしました。
そして、しばらくの間嫌がらせと邪魔の応酬を受けた記憶があります。
で、結局載せない・載せてもCPLDまでという折衷案でエラーと起動シーケンスだけ処理するというしょうもない結果に至りました。
現場からはI2C空けてあるので、色々とれるようにしたいねぇ~!なんて話があったのですが、結局何もできず…。
止めてきた輩が言うには
『それは俺がやりたいことだ!中途採用のお前がやるのは許さん!!』
だそうです。
古典的なスイッチング電源の回路も真面に書けないうえに、マイコンのプログラムをまともに組んだことない奴が何言ってんだ?なんて思ったものです。
出世欲にまみれた輩って何でそんなにマウントとりたいんですかねぇ?お前の仕事は人に仕事をやらせることだろう?と小一時間…(ry
良いなぁ~GaNって…効率90%を余裕で超えられるんだぁ~。使って遊びてぇなぁ~。
チョークやトランスのコアで悩みてぇ~。変なところから出てくる電磁界放射対策で悩みてぇ~!
きっと面倒くせぇ~技術的問題が一杯山積みで、解きほぐす度に新しい発見があるんだろうなぁ~。
そんな訳でこういう測定の勘所・優先すべき測定的な話題については、多系統の電源を要求されるそこそこ早いプロセッサ周りの電源の開発をしている人たちではガチで色々議論されていそうなんですが、私は所詮道路屋さんです。
いい意味で頭のネジの飛んでそう(超誉め言葉)な素晴らしい方々と一緒に仕事できないのは非常に残念であります。
過去、PCIeのクロック源・電源評価で電源電圧変動がクロックのジッタを誘発するのでPCIe4以降は制約が厳しい!
マージンを確保・動作の確証を得るために電源電圧ノイズ対クロックジッターの相関関係を測る環境を構築したいっ!てそれなりの専門家の達前で言ったら、当時(10年ぐらい前)はこの話は一般的ではなかったためか、皆『何言ってんだコイツ?』みたいな反応でしたもんね…。
尤も、この電源電圧変動とクロックジッタの相関性問題はこの前のテクトロニクスのそこそこ重鎮さんたちが警鐘を鳴らし始めたんで、やっと一般的な問題のようになりましたが…。
本当に現場を牽引している一握りのガチンコ技術者と仕事したいなぁ~と思うのですが、何時になったらそういう人と仕事できるんでしょうか?
むしろ、そういう人と仕事の現場で会えるのでしょうか?
マジで海外に出稼ぎする時期が来たかもしてない…なんて思う今日この頃です。
え?何でPSRR測って晒さないのかって?
…だって測定するの結構面倒くさいんだもん…