2014年6月3日火曜日

今回の小ネタノーケン製KRVの修理

最近、よく
『こわれたから直して』
と、精密機器を渡されるのですが、
分解してから言わないでほしいと思う今日この頃です。

こういう機器の故障修理をするに当たって肝心なのは、どんな状態で壊れたのか?というのを分解しながら状態を観察し、推測することだったりします。
そんな訳で、分解された状態で渡されると『???』となり、解析するのにえらく手間取るのです。
最近私大方のものは直すのが分かって来たらしく、分解して自分で構造を納得してから渡してくれます。
正直勘弁して欲しい…と思う今日この頃です。

で、今日の御題はノーケン製KRV
誘電率という物性を利用した検出器です。
電気的共振による検出で、LCの共振中を平常時に設定します。検出時は周囲環境の電極物質が近傍に近くづくと、比誘電率が1から外れることによって共振が外れて電圧が変化し、検出します。
構造がいたって単純で色々と検出精度が高く、色々な業界で使われている方式です。

さて、あいも変わらず?に壊れた箇所は

  • トランスの足が金属疲労により破断
  • コンデンサの寿命による劣化

の2点。非常に教科書的な壊れ方です。
そもそも、熱いところで使用している上に、隣でハンマー使ってガンガン叩いているので、嫌でも金属疲労がおきます。
直接的な原因は電源のコンデンサが劣化してPSRRが劣化したので、定期的(100or120Hz毎)に共振が外れ、綺麗に安定して検出できなくなるというものです。
トランスはばらしたときに偶々気付いたと言うほうが正しいかもしれません。(厳密には検出精度を幾らか左右させていますが、そんなに問題視されるものでもない)
重いものは電気用接着剤で固定するという基本的なことが守られていない素敵仕様です。

コンデンサは相変わらず85℃品が使われているので、ちょっと温度の高い場所で使っているとあまり時間が経っていなくとも肝心な共振が外れ易くなり、測定器としての機能が壊れます。
産業用途だって言ってんのに、どういう神経しているんでしょうね?設計者を小1時間問い詰めてみたいところです。

そんな訳で、電解コンデンサを入れ替え、トランスの金属疲労箇所のはんだ補修とポリアミドでの固定。これだけで簡単に本日の日給分が稼げました。時間にして30分。




ちなみに、電解コンデンサと並列にセラミックや、フィルム系のコンデンサを入れて、リップル電流を下げてあげる工夫をすると、もっと寿命が延びます
コンデンサの寿命はあくまでも、外気温度に加えて内部発熱で上がった温度が基準です。
リップル電流を減らすことはとても重要なことです。
電源を触る設計者は、どの程度のコンデンサを並列化すれば価格性能比が一番優れるのか?
幾らか実例で計算してみて、実物を見て、確認しておくことをお薦めします。

ではでは、今日はココまで。
またの機会に会える事を楽しみにしています。

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