私は中部圏で色々と活動させていただいているのですが、どこに行くにしても必ずと言って良いほど伝えようとする事があります。
“良い物を作るには先ず基礎がしっかりしていないといけない”
しかしながら、この傾向は特定以上のレベルのエンジニアでもない限り、あまり前向きに伝わるものでは有りません。
そこで、簡単ですが、電気の土台でもある電源からお話したいと思います。
昨今、特に近年の電機業界において、電源またはその周辺の設計は非常に軽視されています。
私が過去携わった会社の中でも、コンシューマ系は評価自体がされていない事が多く、
“保障期間の1年だけ動けば良い”
という設計がされています。
もちろん、本人たちはそういう意思は無いのでしょうが、結果的にそうなっている以上、そういう状態であることを認めざるを得ないと思います。
市場は非常に現実的です。結果が最も優先的に評価され、その次に評価されるのが背景ですから、結果が伴わないと思われる非生産行為をすべきではありません。
この結果というのが厄介で、信頼や、ブランド力の構築にも直面しています。
信頼やブランド力は落ちるのは一瞬ですが、構築するまでの努力や時間は並大抵のものではありません。
昨今、会社の中で短期的な戦略がとられるのは、
“信頼や、ブランド力の構築よりも、目先の操業をするための収益”
に拘っているからであります。
何故そのような方針を採るのか?ですが、
短期的な株主(デイトレーダ)が多い
↓
収益が落ちるのを拒むので短期的な資金・現金を求める役員構成になる
↓
会社は役員の色で染まる
↓
社員は目先のものしか評価しなくなる
↓
当然のように可視化できないブランド力や信頼は後手に回る
↓
まじめな設計者は虐げられて出て行くか、顔を潜める
↓
会社として負のサイクルが始まる
↓
ブランド力の無いもの・信頼性の無いものは必然的に客が離れ、収益が悪くなる
↓
リストラする
↓
負のサイクルがどんどん強くなる…
こういった構図から、負のサイクルはどんどん加速し、際限がなくなります。
富士通、NEC、日立、SONY、松下(本社系)など、日本の大手が痛んだ理由も大体はこのような構図です。
特に外資や、事務職の強い組織(丸紅、三井、UFJなどの非生産系の業種)が加担すると、際限がなくなりますよね。彼らはブランド力なんていうものは飾りとしか思っていません。
ブランド力とは絶対的な信頼性能+企業としての価値観ですから、それがなくなるということは、既に韓国や中国の企業に勝てる能力を捨てたとも言える訳です。
『信頼性はブランド力、すなわち付加価値』だと国側は大々的に広めようとしています。
しかし、肝心な企業はそれを無視して、一生懸命に代わり映えしない付加価値の無い似たような物をモデルチェンジと言い張って消費者に押し付けようとするわけです。
当然ながら、消費者は必要以上に買わないのが明白です。買っても何の価値も無いのですから。
日本の電機業界が何故今とても危ないのか?
麻生元総理が何故あの立場で『株屋は胡散臭い』と発言したのか?
少しは見えてくると思います。
さて、話を戻しまして電源の話です。
電源は信号品質の根幹とも言える問題を大きく左右する代物ですが、あまり評価がされていないことは先ほど述べました。
私の居た職場だけでないことは私が個人的に所有している設備で電源の特性を計った結果からも明白です。
代表例ですが、パソコンの電源インピーダンスを計った例を添付します。
インピーダンスが高いと、負荷の変動に応じて電圧が振動し、信号の品質を低下させる。単純にそう考えていただけると分かり易いと思います。
つまりは、高い周波数までとても低い値である事が求められます。
また、非常に平坦であることも重要です。突起はすなわち共振の可能性を示唆するわけで、その周波数の振動に特に弱い事が示されます。
つまりは、意図的にその周波数で高い負荷を与えるソフトを組めば、パソコン自体を機能停止させることも可能なのです。
測定結果から分かるように、本来、パソコン、ワークステーション等の電源は、然るべき設計がされていなければ安定動作の保障ができません。しかしながら、世間に出ている電源の殆どは容易にノイズを生み出します。
これはほんの一例です。過去、興味本位で色々と計っていたのですが、どうも業務機器ですらまとものな設計ができていない事が多いです。
インピーダンスのターゲットを決定し、それに合わせた電源の構成をすべきですが、あまり真面目に設計をやっている人を見た記憶が有りません。
東芝のセルレグザチームはしっかりと設計を行っていたようですが、ラムバスフォーラムでの講演が無いので、その後の設計部隊がどうなったのか?遠く離れている立場なのでよく分からなくなってしまいました。
土台は塗装・接着・接合なら下地処理ですし、建築なら基礎工事です。機械なら母材の特性に相当します。車ならフレームの構成です。
安易に妥協せずに、しっかりとした基礎のある設計を行うように心がけましょう。
今回はココまで、では、またの機会に。
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